2006年04月15日 超個人的WEB懐古録 その1:「1%の心配り」
:Web業界に身を置く一人として、たまにはWebクリエイターらしいことも書いておかんとな、と思い立つ。
:しかしながら、なにぶんWeb業界の端くれの端っこくらいにいる立場上、「Webとは!」などと大見得を切って書くことができない。そこで、あくまで個人的な体験の中での罪の無い昔話でもしようかな、と逃げてみた。
:ただ、いかんせん視点が辺境の地にあるため、「こういうこともあったよねぇ。え?オレだけ?」という結果になることも往々にしてあると思う。まぁそこら辺は、「Webという地球規模の話をしていたはずが、何故かローカルトーク」という稀有な例としてお読みいただければ幸いかと。
:ということで第一回のテーマはFLASHのゆらゆら現象について。一回目にしてこのローカル臭。なにせ「ゆらゆら現象」などと呼んでいたのは、私の知る限り私を含めて二人だけだ。
:FLASHには、まだバージョンがMXまでの頃、ひとつの致命的なバグがあった。
:これは、FLASHでjpg画像などを動かす際、不規則に画像の一部が歪む現象のことである。厳密にはFLASHプレイヤーのバグだったのだろう。画像を横にスライドさせたり、あるいは画像の上を何かに横切らせたりすると、画像の一部が一瞬縮んですぐ戻る現象がよく発生していたのだ。これを、私と恩師の二人が「ゆらゆら現象」と言っていたのである。「画像がカックンとなる」とも言っていた気もするが、その言い方はプロとしてちょっとどうなんだ、と思って「ゆらゆら現象」の方をを広めるようにしていた。
:解決策として、色々とおまじないみたいな方法が試みられてはいたのだけれど、どれもこれも決定打ではなかった。結局、これに関しては「仕方ないもの」として済ましていたようなものだった。
:しかしその後、決定的な解決策が見つかる。画像のアルファ値(透明度)を99%に設定すると、なんと全く発生しなくなったのだ!…ということをグーグル先生にとよって教えてもらったのである。やっぱりあれだ、クライアントに迫られて必死のパッチになれば、まぁなんとかなったりするものなのだ。
:それからは、もうとにかく99%。jpgを動かすとなればアルファを99%。動かさなくてもとりあえず99%。あれもこれも99%。結果、「ゆらゆら現象」は甘酸っぱい思い出の一つになった。
:が、つい最近、何の気なしにアルファが100%のままの画像を動かしてみた。するとどうだ、「ゆらゆら現象」にならない。いくつ動かしても、カックンとならない。これには驚いた。FLASHプレイヤーはいつの間にかバグを直していたのだ。
:問題は「いつの間にか」の部分である。あの後、プレイヤーがバージョンアップしていくなかで、どのタイミングで改善されていたのか、私は知らない。もしもかなり昔に改善されていたとしたら、一つの不安が頭をよぎる。「ひょっとして、ムービーを無駄に重くしていたかもしれない…」ということが。
:FLASHは基本的に、普通の画像を動かすよりも、画像を透明にしたりするほうが処理に負担が掛かる。結果、そのせいでムービーが重くなることがある。今回の場合、画像を意図的に「微妙に透明」にしているわけで、ムービーを重くしていた可能性は充分にある。それでも、安心感があるからやっていた訳なのだけれど…、今となってはその1%ずつが溜まりに溜まって数百%分の後悔になっている。正直なところ、どれもこれもやり直したい。
:こんな最先端な分野でありながら、Webのテクニックには「おまじない」みたいなことがたくさんある。今回の場合、「99%にする」というおまじないを知らなかった方が時代の変化に対応できていた訳で、もうどこに落とし穴が仕込んであるか分かったものではない。
:結局、普及する暇もなかった「ゆらゆら現象」という言葉が、"最新情報には敏感であれ"という教訓をものすごく遠まわしに教えてくれた気がしてならないのである。